先端ネットワーク研究室(Advanced Network Laboratory, Advnet)では,広島大学のキャンパスネットワークや情報サービスの設計・運用に携わる経験を生かしながら,日々進化するネットワークや情報システムを効率的かつ安定的に運用管理する技術やセキュリティ技術の研究開発を行っています。
現在以下のような研究に取り組んでいます。ここに示す研究内容でなくても,興味のある内容や身近な社会課題を解決するためのネットワーク・セキュリティ技術,システム開発であれば,広く研究テーマとして取り扱っています。
なお,過去に作成している研究室紹介ポスターを以下からご覧いただけます。
GIGAスクール構想におけるネットワーク品質計測と可視化手法に関する研究
全国の小中学校で進むGIGAスクール構想のもと,「ネットが遅い」「つながらない」といった課題を解決する研究です。実際に東広島市内の小中学校を対象に44校以上でネットワーク品質計測を行い,ログやメタデータを収集・分析します。さらに,これらの情報を現場の教員や技術者などの立場に応じて,直感的にわかりやすく提示する可視化について研究しています。将来的にはAIOpsの技術を活用して異常の兆候を自動検出,解決策と提示する技術を目指し,教育DXを支える基盤づくりに取り組んでいます。
IPv6インターネットの高度利用に関する研究
IPv6は,今後のインターネットを支える重要な基盤技術です。本研究では,広大なアドレス空間を活かしたマルチホーム環境の構築や,IPv6-Mostly環境への円滑な移行技術を検討しています。また,エンドツーエンド接続性を活かしつつ安全に利用するためのセキュリティ技術にも取り組んでいます。理論だけでなく実ネットワークでの検証も行い,将来にわたって安心・快適に使えるインターネットの実現を目指しています。
※IPv6-Mostly = IPv6接続性だけで問題なく動作するホストはIPv4を無効にし,そうでないホストには今まで通りIPv6とIPv4アドレスを両方配布する技術
IoTを支えるロバストかつスケーラブルな通信方法に関する研究
センサやカメラが多数接続されるIoT (Internet of Things) 社会では,止まらない・広がる通信基盤が必要です。本研究では,Pub/Sub通信モデルやMQTT(Message Queuing Telemetry Transport)を活用し,大量デバイスを効率よく制御する仕組みを検討しています。さらに,低遅延で信頼性の高いQUICを取り入れ,回線が変動する環境でも安定して動く通信方式を設計します。Beyond5G/6Gやエッジコンピューティングとも連携し,未来のスマート社会を支える基盤技術を探究しています。
マルチメディアリアルタイム伝送技術に関する研究
4K・8K映像や360度映像などの高臨場感通信を,インターネット上で安定して届けるための研究です。大量データを効率よく送るために,Media Over QUICといった新しいトランスポート技術を活用し,遅延やパケット損失に強い伝送方式を検討しています。ネットワーク状況に応じた適応制御も取り入れ,遠隔教育や遠隔医療,エンターテインメントなどに活かせる,よりリアルでスムーズな体験の実現を目指しています。
ロボットサービス・画像処理による監視点検の自動化
サーバ室や避難所などの設備点検を,人に代わってロボットや画像処理技術が行う仕組みを研究しています。LED表示や音の変化を検知する異常検知技術や,リニアレール上を移動する自動監視装置,移動ロボットによるネットワーク情報収集などを組み合わせ,人の作業を代替・補助・自動化します。災害時にも活用できるロボットサービス基盤を構築し,安全で効率的な運用管理を実現します。
無線LAN環境のQoE可視化
「電波はあるのに遅い」といった体感品質の違いに着目し,無線LANのQoE(Quality of Experience)を可視化する研究です。スマートフォンから通信データを収集し,ユーザ視点での通信品質を分析します。少数の観測データから推定・予測を行い,ネットワークの改善点を提案するアセスメント技術を開発しています。見えにくい“使い心地”を数値と図で示し,より快適な無線環境づくりに貢献します。
低軌道衛星の観測による分析・ハンドオーバ回避・活用
Starlinkなどの低軌道衛星(LEO)を活用したインターネット接続の安定化を目指す研究です。全国多地点で観測データを収集・分析し,衛星切替(ハンドオーバ)時に生じる遅延や性能低下を緩和するプロトコルを開発します。さらに,災害時に非地上系ネットワークを効果的に活用する方法も検討しています。地上回線と衛星を組み合わせ,どこでもつながる強靭な通信基盤を実現します。
分権型インテリジェンス
ブロックチェーンなどの分権型コンピューティング技術を活用し,中央管理に依存しない安全で拡張性の高いAI基盤を構築する研究です。特に,LLMを含むマルチエージェントシステムのセキュリティや信頼性を高める仕組みを検討しています。分散環境でも安心して協調学習や知識共有ができるアーキテクチャを設計し,次世代の分散知能社会を支える基盤技術の確立を目指します。
エージェントのインターネット(Internet of Agents)
多数のAIエージェントがネットワーク上で自律的に連携・協調する「エージェントのインターネット」を提案しています。各エージェントが知識を共有しながら意思決定を行い,分散型システム全体として賢く振る舞う仕組みを構築します。ニューラルネットワークや分散学習技術を応用し,Web3やDeFi分野への展開も視野に入れています。人とAIが共存する新しいインターネット像を探究しています。
プログラム脆弱性の検知と修復に関する研究
ソフトウェアに潜在する脆弱性を自動的に検出し、安全かつ効率的に修復する技術の確立を目的としています。静的解析・動的解析・AI技術を統合することで、実運用環境に適用可能な高精度なセキュリティ対策の実現を目指しています。
自己主権型アイデンティティ
個人や組織が自分自身のデジタルIDを管理する「自己主権型アイデンティティ(SSI)」の理論と技術を研究しています。中央機関に依存せず,暗号理論やゼロ知識証明を活用して,必要な情報だけを安全に提示できる認証方式を実現します。プライバシーを守りながら信頼性の高い認証・認可を可能にし,将来の分散型社会にふさわしい安全なデジタル基盤を目指します。